日出処の天子

 

 

 独特のホラーマンガ家である。

怖い雰囲気を独自のセンスで出そうとする

ちょっと他にない演出をしたがるマンガ家である。

 

 ホラーマンガといえば、怪物を出したり流血を強調したりして

読書をびびらせる類のものが非常に多いが、このマンガ家は全く正反対で

とにかく静かな恐怖というものを

うまく演出しようとあの手この手を使う。

特にこのマンガでそれに成功しているように見える。

 

ちょっと吉田秋生のマンガに似た雰囲気がある。

 

話は、題名通り聖徳太子の少年時代である。

歴史ものかと思いきや、これは完全なフィクションというか

エンターテインメントで

BLマンガの非常に代表的なものだと思えばいい。

 

そこにホラー的な雰囲気の要素が加わったマンガといえるだろう。

 

このホラー要素を出すのが非常にうまく

『疫神』という幽霊のようなものが登場するシーンがあるが

小さなコマであるにもかかわらず、ものすごくリアリティーがあるので

本当に幽霊を見てしまったかのような

ショッキングさがある。

 

  このように見えないものが見えるとか

真相はどうだかわからないという怖さを感じさせるのが

このマンガ家の得意技である。

 

 

最近は、『テレプシコーラ』というバレエマンガを描いていた。

 

主人公の姉が破滅するが、真相がわかりそうでわからない

本当はどうだったのかわからない、なんとなく犯人はこいつだろうと

思いつつもはっきりさせないというところが

このマンガ家の持ち味とも言える。

これもまた非常に面白い。

 

 

 

また 非常に意外な展開をするマンガ家である。

およそ3枚目が主役級の活躍をしたり、思ってもみないような急展開を

したりとかなり読者の予想を裏切る。

   そして突然話が終わったりする。

 

他にない世界観を味わえるマンガ家で

まだ読んだことがない人はぜひ!

 

日出処の天子』は権力争いを

からめた青春物語で、頭の切れる気難しくてひねくれ者の

ヒーローの悲しい青春物語といえばいいだろう。

ある意味、少女マンガでウケるド定番ともいえる。

 

話自体も非常によくできているし

ちょっとした心理のすれ違いとか

細やかな心理描写のじれったいところが非常にうまい。

 

いかにも少女マンガらしい繊細な

心の揺れを生かした話。

これもまた相当昔のマンガなのだけれど

今も全く色あせない面白さがある。